野蒜の海から来た少女（伊藤仁）

出版・編集・企画：杜の都仙台の出版社「本の森」ホームページ

野蒜の海から来た少女

伊藤仁著
定価（本体1500円＋税）
ISBN978-4-904184-58-5
大震災をテーマに、命の尊さ、人間の生き方を問う感動の物語！

あの３月11日から間もないある日、津波で大きな被害を出した東松島に近い内陸の町で、小さな出来事があった。幼い女の子が、たった一人でいるところを保護されたのだ。

保護したのは、この町で農業を営む老夫婦。夫の民夫が、自宅の庭にいる７、８歳くらいの少女をみつけた。
少女は何を聞いても口を開かない。町内の一時避難所に身を寄せている被災者の子供ではないかと考えた民夫と妻の菊代は、行方不明の少女がいないか避難所を回るのだが、あの大混乱の最中、少女の身元は、なかなか分からない。
菊代は東京にいる一人娘の真知子に少女のことを相談する。
医療関係の仕事をしている真知子は、少女が大きなショックによる失語症ではないかと推測した。そして、ようやく運転を再開した新幹線で帰郷し、少女と対面する。
真知子には、幼い頃病気で死んだ妹がいた。老夫婦も死んだ娘が帰ってきたような気持ちになり、少女を我が子のように世話する。

ある日、大きな犬が民夫の家に迷い込む。その犬は、少女の愛犬リキだった。これをきっかけに少女は自分のことを少しずつ話し始める。
少女の名前は千鶴。両親と東松島の野蒜（のびる）に来ていた時、大震災が起き、両親や愛犬ともども津波に巻き込まれたのだった・・・。

■伊藤仁（いとう・じん）
宮城県遠田郡美里町在住。専業農家をしながら、歴史小説を執筆している。

■主な著書

 さらば星座
 ［改訂版］風雪の太陽 101人の慈父・慶念坊
『蝦夷の幡風』『砂漠の薪能』『幕末疾風録上・下』『海神よ眠れ』（以上、筑波書房）、『まほろばの東』（東洋出版）などがある。